発声・滑舌練習の要!外郎売りについて

今回は、役者を目指す人ならば必ず通る「外郎売り」についてまとめてみました!
もう知ってるよって方は復習として、初めて聞いたよって方は学習として参考にしてもらえたらと思います♫

そもそも外郎売りとは?

「外郎売り(ういろううり)」は、古典芸能である歌舞伎の一部に登場する口上(こうじょう)の一つです!口上とは、舞台上で役者が観客に向けて話す挨拶や説明のことを指します。

享保3年に歌舞伎十八番(おはこ)の一として、二代目の市川団十郎が作りました。

外郎売りの口上は、発音や滑舌の練習に非常に適していることから、今現在も声優や俳優の訓練に広く用いられています。

外郎売りの詳細と背景

外郎売りは、江戸時代に実在した「外郎(ういろう)」という薬の行商人が商品の効能を宣伝するために行っていた口上を題材にしています。
この薬は、咳止めや喉の痛みに効くとされ、現代でいうトローチのようなものです。口上は、この薬の効能をさまざまな比喩を用いて巧みに説明する内容で構成されています。

口上の内容は非常に多様な言葉やフレーズが含まれており、早口で話す箇所も多く、滑舌や発声のトレーニングに最適なのです!
また、「いろは歌」の要素を取り入れている部分もあり、文字や言葉の音遊びも楽しめます♪

なぜ外郎売りが練習に適しているのか

そうは言っても、なぜこうも外郎売りがプッシュされまくっているんだろう?と思う方も少なくないと思います。
理由としては下記の4つにあります!

  1. 発音の多様性: 外郎売りの口上には、様々な音節や言葉が含まれており、特に難しい発音や舌を使う音が多くあります。これにより、発音練習に非常に効果的です。

  2. 滑舌の強化: 長い文章や早口の部分が多く、口の動きを鍛えるための滑舌練習として最適です。速いテンポでの正確な発音が求められるため、声の明瞭さを向上させるのに役立ちます。

  3. 表現力の練習: 感情や抑揚をつけて話すことが求められるため、表現力の強化にも役立ちます。役者は単なる朗読ではなく、聴衆に訴えかけるような話し方を練習します。

  4. 記憶力の向上: 長いテキストを暗記することで、記憶力のトレーニングにもなります。これは、台本を覚える必要がある俳優や声優にとって重要なスキルです。

外郎売りの内容と意味

ここから外郎売りの内容に入っていきます。文章の意味も載せますので、練習の際はぜひ情景を思い浮かべながら練習してみてください!

拙者親方と申すは、お立会いのうちにご存じのお方もござりましょうが、お江戸を立って二十里上方、(かみがた)相州小田原一色町(いっしきまち)をお過ぎなされて、青物町を登りへお出でなさるれば、欄干橋虎谷藤右衛門(らんかんばしとらやとうえもん)、只今は剃髪いたして、円斎と名乗りまする。
(私の親方と申しますのは、お集まりの皆様のなかにもご存じのお方もいらっしゃいましょうが、お江戸をたって二十時間ほど京都方面に向かい、神奈川県小田原の一色町をお過ぎになって、青物町をさらに京都方面にお出でになさいましたら、昔は欄干橋の虎谷藤右衛門と申しましたが、今は出家いたしまして、円斎と名乗っております。)
元朝(がんちょう)より大晦日(おおつごもり)まで、お手に入れまするこの薬は、昔、ちんの国の唐人、外郎(ういろう)という人わが朝へ来たり、帝へ参内(さんだい)の折から、この薬を深く篭め置き、用ゆるときは一粒(いちりゅう)ずつ、冠のすき間より取り出す(とりいだす)、よってその名を帝より「頂透香(とうちんこう)」と賜る。すなわち文字(もんじ)には、「いただき、すく、におい」と書いて「とうちんこう」と申す。

(元旦から大晦日まで、いつでも手に入りますこの薬は、昔、中国の唐人の外郎という人が、日本の朝廷に来て、帝が宮中に参上された折に、この薬を深くしまっておいて、薬を使うときは一粒ずつ、冠のすき間から取り出します、よってその薬の名前を帝から「とうちんこう」と名付けていただきました。つまり文字では「頂き、透く、香い」と書いて「とうちんこう」と申します。)

只今はこの薬、殊の外(ことのほか)世情に広まり、ほうぼうに偽看板を出だし、いや小田原の、灰俵の、さん俵の、炭俵のと色々に申せども、平仮名を以って「ういろう」と記せしは親方円斎ばかり、もしやお立会いの内に、熱海か、塔ノ沢へ湯治(とうじ)にお出でなさるるか、又は、伊勢御参宮の折からは、必ず門違い(かどちがい)なされまするな。

(今ではこの薬は、特別に世間に広まり、あちこちに偽看板を出し、いや小田原だの、灰俵だの、さん俵だの、炭俵だのと色々に申しておりますが、平仮名でもって「ういろう」と書きますのは、私の親方円斎だけでございまして、もしお集まりの皆様の中に、熱海か、塔ノ沢へ湯治にお出かけになさいますか、または伊勢神宮にご参拝なさいます折には、必ずお店を間違えなさいまするな。)

お登りならば右の方(かた)、お下りなれば左側、八方が八つ棟(やつむね)、おもてが三つ棟玉堂(ぎょくどう)造り、破風には菊に桐のとうの御門をご赦免(ごしゃめん)あって、系図正しき薬でござる。

(江戸方面から来られたなら右の方、京都方面から来られたならば左側に、屋敷は屋根のとがった部分が八つ、門構えは屋根のとがった部分が三つの美しい殿堂で、破風には天皇家の紋章を付けることをお上からお許しいただいております、由緒正しい薬でございます。)

いや最前より家名(かめい)の自慢ばかり申しても、ご存じない方には正身(しょうしん)の胡椒の丸呑み、白河夜船、さらば一粒(いちりゅう)食べかけて、その気味合いをお目にかけましょう。

(いや先ほどから家名の自慢ばかり申しましても、ご存じのない方にはそのまんま胡椒の丸呑みのごとく味がわからぬ、眠りこけて訳が分からぬ、それなら一粒食べまして、その味わいをお目にかけましょう。)

先ず此の薬を、かように一粒(いちりゅう)舌の上に乗せまして、腹内へ納めますると、いやどうも言えぬは、胃、心、肺、肝がすこやかに成りて、薫風(くんぷう)喉(のんど)より来たり、口中(こうちゅう)微涼(びりょう)を生ずるが如し、魚鳥、きのこ、麺類の喰い合わせ、その外(ほか)、万病速攻あること神の如し。

(まずこの薬を、このように一粒舌の上に乗せまして、腹の中に入れますと、いや何とも言えませんな、胃、心臓、肺、肝臓がすっきりいたしまして、爽やかで気持ちのいい風が喉から吹いてきて、口の中に涼しい風が吹くようでありまして、魚や鳥、きのこ、麺類の食べ合わせ、そのほか、万病にたちどころに効き目があること神業のようであります。)

さて此の薬、第一の奇妙には、舌の回ることが、銭独楽(ぜにごま)が裸足で逃げる、ひょっと舌が回りだすと、矢も楯もたまらぬじゃ。

(さてこの薬の効能の中でも、第一にすばらしいことは、舌の回ることが、銭独楽が裸足で逃げるほどよく回ります、ひょいと舌が回りだすと、矢でも楯でも止まらぬほどですわい。)

そりゃそりゃそらそりゃ、回ってきたは、回ってくるは、アワヤ喉(のんど)、サタラナ舌(ぜつ)に、カ牙サ歯音(かげさしおん)、ハマの二つは唇の軽重、開合爽やかに、

(そりゃそりゃそらそりゃ、舌が回ってきたわ、回ってくるわ、ア行ワ行ヤ行の喉音、サ行タ行ラ行ナ行の舌音に、カ行の牙音(がおん)、サ行の歯音、ハ行とマ行の二つは唇の軽重で発音し分けます、口の開け方が爽やかになりまして、)
※ここから早口言葉が続くので言葉の意味は割愛します

アカサタナハマヤラワオコソトノホモヨロヲ、
一つへぎへぎにへぎほし薑(はじかみ)、
盆まめ、盆米、盆ごぼう、
つみたで、つみ豆、つみ山椒(ざんしょう)、
書写山の社僧正、粉米(こごめ)のなまがみ、粉米のなまがみ、こん粉米のこなまがみ、
繻子(しゅす)、緋繻子(ひじゅす)、繻子、繻珍(しゅっちん)、
親も嘉兵衛(かへい)、子も嘉兵衛、親かへい子かへい、子かへい親かへい、
古栗(ふるぐり)の木の古切口、
雨がっぱか、番がっぱか、貴様のきゃはんも皮脚絆(かわぎゃはん)、我らがきゃはんも皮脚絆、
しっかわ袴(ばかま)のしっぽころびを三針針ながにちょと縫うて、縫うてちょとぶんだせ、かはら撫子(なでしこ)、野石竹、
のら如来、のら如来、三のら如来に六のら如来、
一寸先(ちょとさき)のお子仏に、おけつまづきゃるな、細溝にどじょにょろり、
京の生鱈、奈良学鰹(まながつお)、ちょと四五貫目、
お茶立ちょ、茶立ちょ、ちゃっと立ちょ茶立ちょ、青竹茶筅(ちゃせん)で、お茶ちゃと立ちゃ、


来るは来るは何が来る、高野の山のおこけら小僧、狸百匹、箸百膳、天目百ぱい、棒八百本、
武具馬具武具馬具三武具馬具、合わせて武具馬具六武具馬具、
菊栗菊栗三菊栗、合わせて菊栗六菊栗、
麦ごみ麦ごみ三麦ごみ、合わせて麦ごみ六麦ごみ、あのなげしの長薙刀(なぎなた)は、誰(た)がなげしの長薙刀ぞ、
向こうの胡麻がらは、荏(え)の胡麻がらか、真胡麻がらか、あれこそほんの真胡麻がら、がらぴいがらぴい風車、
おきゃがれこぼし、おきゃがれこ法師(ぼうし)、ゆんべもこぼして、またこぼした、
たあぷぽぽ、たあぷぽぽ、ちりからちりからつったっぽ、たっぽたっぽ一丁だこ、
落ちたら煮てくを、煮ても焼いても喰われぬものは、五徳、鉄球、かな熊(ぐま)どうじに、石熊(いしぐま)、石持ち、虎熊(とらぐま)、虎きす、
中にも東寺の羅生門には、茨木童子がうで栗五合(ぐりごんごう)つかんでおむしゃる、かの頼光(らいこう)の膝元去らず、


鮒、きんかん、椎茸、定めてごたんな、そば切り、そうめん、うどんか、愚鈍な小新発知(こしんぼち)、
小棚の、小下の小桶に、こ味噌がこ有るぞ、こ杓子(しゃくし)、こもって、こすくって、こよこせ、おっとがてんだ、心得たんぼの川崎、神奈川、程ヶ谷、戸塚は走っていけば、やいとをすりむく三里ばかりか、藤沢、平塚、大磯がしや、
小磯の宿(しゅく)を七つおきして、早天そうそう、相州小田原とうちんこう、隠れござらぬ貴賤群衆(きせんぐんじゅ)の、花のお江戸の花ういろう、あれあの花を見て、お心をおやはらぎやと言う、
産子(うぶこ)、這う子に至るまで、角だせ、棒だせ、ぼうぼうまゆに、うす、杵(きね)、すりばち、ばちばちぐわらぐわらぐわらと、

羽目を外して今日(こんにち)お出での何茂様(いずれもさま)に、上げねばならぬ、売らねばならぬと、息せい引っ張り、東方世界の薬の元締め、薬師如来も照覧あれと、ホホ敬って、ういろうは、いらっしゃりませぬか。

(羽目を外して今日ここにお集まり下さった皆様に、私は薬を差し上げねばならぬ、売らねばならぬと、全力で東方浄瑠璃世界の元締めである、薬師如来様もご覧くださいませと、ホホご挨拶いたしまして、ういろうを、さあどうぞお買い求めくださいませ。)

まとめ

ここまで読み進めてくださった皆さま、お疲れさまでした!!かなり長かったですよね(;^_^A

「外郎売り」は、古典的な日本文化の一部であり、発音、滑舌、表現力の練習に最適な教材として、今でも声優や俳優を目指す多くの人々に愛されています。
さらに、歴史的背景や文学的価値も理解することで、深い学びが得られること間違いなしの題材になっています♪
全部をやれなくても、毎日一塊ずつこなしていきましょう!

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